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世界の遺品整理事情・アメリカと中国は遺品をどう整理している?
2020-09-22

これまで、日本国内の遺品整理事情についてお話して来ましたが、今回は海外に目を向けてみましょう。
海外では、遺品をどのように処分しているのでしょうか。
神道や仏教の考え方が浸透している日本では、仏壇や神棚に始まり、故人の愛用品にもその人の魂が宿るという考えがあります。そのため、供養をしたり、専門の業者に依頼して丁寧に仕分けをしようということになります。

しかし、キリスト教やイスラム教などを信仰する国では、たとえ宗教に関するものであっても単なる「モノ」に過ぎず、供養しようという考えはありません。
このように、宗教やものの考え方が違う国においては、遺品整理の仕方も日本とは違うと考えられます。今回は、海外における遺品整理事情について見てみましょう。
また、後半では、遺品整理で出た家財や不用品がどのように扱われているのか、最新事情もみていきます。

アメリカの場合

  • アメリカの遺品整理とは?
  • 形見分けはするの?
  • 遺品整理業者は存在する?

アメリカの遺品整理とは?

日本と違い、欧米では家具付きの賃貸借住宅が一般的です。そうなると、日本とは違い、タンスやダイニングセットの処分に困るということは少なそうですね。

アメリカでは、不動産の明け渡しに関する法律上の取り決めや、損害保険の契約も日本よりも厳密なので、人が亡くなったあと、建物の明け渡しを急がなくてはならないようです。

そのため、遺品処理の仕方について、故人が生前に遺言によって取り決めておくというケースが少なくありません。
また、お金に余裕がある人は、成年後見制度が必要であれば、早いうちに亡くなった後のことまで依頼しておく場合もあります。

特に、国際化が進んでいる現在では、国際結婚も増えています。親御さんが亡くなった時、海外で暮らしている遺族にとっては、遺品整理の負担は大きいものです。そういった場合も、生前に死後のことを決めておけば安心ですよね。

最近では、日本でもエンディングノートや生前整理がポピュラーになりつつあります。そういった意味では、欧米の方が一歩進んでいるのかもしれません。

形見分けはするの?

日本では、遺品整理をしたら、遺族や親族、故人と親しかった人で形見分けをするのが一般的ですよね。それは、遺品を「モノ」として捉えているのではなく、故人の魂がこもっているという考えがあるからです。
アメリカにも、日本の形見分けに似た習慣はあります。
古いもの、良いものを子孫に残して大切に使ってもらうというもので、例えば女性であれば、指輪やネックレスなどのアクセサリーを一族の女性に代々受け継ぐという伝統があります。
映画『パルプ・フィクション』では、父の形見の金時計がモチーフとして使われていました。

遺品整理業者は存在する?

日本では、故人のお棺に愛用品などを入れることがありますよね。でも、キリスト教では、人は死後、生前の行いをもとに、天国に行くか地獄行きかを決定されます。
キリスト教においては、死は生からの断絶であり、生前の物をあの世へ持っていくことはできません。そこで、故人の遺した品は、この世での流通過程に入るというわけです。
そこで、人が亡くなると、自宅で遺品を販売する「エステートセール」という即売会のようなものが開かれます。
このエステートセールを代理で行うのが、アメリカにおける遺品整理業者のようなものです。

  • エステートセールとは?
  • エステートセールの人気商品は?
  • アメリカの遺品整理業者とは?
  • 日本とアメリカの違い

エステートセールとは?

「エステートセール」は、人が亡くなったあとに、故人が遺した家財道具や不動産などを販売して、処分する遺産整理の方法です。
アメリカでは、相続人が使いたいものや残したいものを除き、売却してお金の清算をするのが一般的だそうです。

つまり、残すもの以外は、家も、家にある全ての家財道具や雑貨などを全て売って現金化するわけです。
相続人が必要に迫られて開くこともあれば、遺産検認裁判所がエステートセールを行うよう指示する場合もあるそうです。

映画などで、「For Sale」という看板を出している家を見たことはありませんか? もしかしたら、エステートセールをやっている家かもしれません。

また、存命中であっても、施設や老人ホームに入るために家財を処分・販売することや、家にある全てのものを処分したいときに、プロに委託することを「エステートセール」と呼ぶ場合もあるそうです。

事情はそれぞれですが、自宅で家そのものや家財道具をオープン販売するなんて、なんともダイナミック。早く、まとめて売ることができるので合理的ですね。
日本では、遺品というとどうしてもネガティブなイメージが拭えませんが、アメリカではそうでもないようです。

そもそもアメリカは、個人がいらなくなったモノを売るのが盛んな国です。
家の前で店開きする「ヤードセール」や「ガレージセール」もとてもポピュラー。そのため、遺品だからと言って、買う側にもそれほど抵抗はないようです。
故人が資産家であればあるほど、高価なものや貴重な品々が売りに出されるかも知れないと期待を集めるため、その住宅の周辺で交通渋滞が起きることもあるほどだそうです。

エステートセールの人気商品は?エステートセールではどのようなモノが売れ筋なのでしょうか。

あらゆる遺品の中で注目を集めるのは、ビンテージものやアンティークもの。コレクターや古物商などが、年代物の食器や家具など、掘り出しものをチェックしに来ることも多いようです。

アメリカの遺品整理業者とは?

アメリカにも、日本でいう遺品整理業者のような業者がいます。
エステートセールを行うための専門業者がそれで、家財の中で売れそうなものに値札をつけ、広告を出し、セールの運営管理を行い、売上の一部をもらうのが仕事です。
遺族は、大切な人を亡くして悲しみの只中にいます。そんなときだからこそ業者が必要で、ビジネスとして成り立っているのでしょう。

日本とアメリカの違い

遺品の形見分けをしたり、売れるものは売って処分したり。日本もアメリカも、遺品整理にはそう変わりはないように思えます。
でも、そうではありません。日本とアメリカで大きく違うのは、「供養」という意識があるかないかです。
日本人には、あらゆるものに魂が宿るという考えがあるため、たとえ処分するものであっても、故人の魂がこもっているものとして供養したりします。
しかしアメリカの場合は、そういった感覚はあまりなく、形見分けするもの以外は単に「モノ」という感覚のようです。

中国の場合

ところ変わって、お隣の国、中国ではどうでしょうか。
中国にも遺言のような制度があり、親から子や孫に物を遺すことはあるようです。
また、故人が身につけていたものなどは、葬儀の際に一緒に燃やす習慣があります。これは、「あの世で使ってください」という意味で故人に届けるために行われます。

古代中国では、死者を埋葬する際に、日用品だけでなく、死者をあの世で守る兵士や馬をかたどった人形が作られました。
それ以前には殉葬(生きている人間を殉死させたうえ、死者と共に葬る)が行われていましたが、次第に廃れ、こういった形になったようです。

特に有名なのが秦の始皇帝陵で、現在までに約8000体もの人形が発見されています。
兵士の顔は、どれひとつとして同じものがないほど精巧に作られています。死後の始皇帝身を守る軍隊だけでなく、宮殿のレプリカや、文官、芸人などの人形も発掘されています。
来世へと旅立った始皇帝のために造設された巨大な遺跡であり、生前の始皇帝の生活そのものを来世に持って行こうとしたのでしょう。

時代が経るに従い、スケールは小さくなっていくものの、副葬品の習慣は続いて行きました。
現代においては、都市化が進んだ場所では事情が変わってきているようですが、地方ではこうした習慣がまだ残っているそうです。
人間は死んだら終わりなのではなく、あの世という場所で生きていくという考えは、日本に近いものがありますね。

海外のリユースマーケット

少し視点を変え、日本で遺品整理の際に出た家財は、どのように処分されているかを見ていきましょう。
遺族の意向にもよりますが、不用品でも使えるものは処分せず、できる限りリユースできるのが理想ですよね。
しかし、現在のところ、日本ではブランド品でないとリユースに回すルートがありません。もともと、遺品に対してあまりプラスイメージがないことも影響しているのでしょう。

リサイクルショップに買い取りの依頼をしても、まだ十分使えるものなのに買い取りしてもらえず、仕方なくお金を払って処分した経験がある人も多いのではないでしょうか。

日本では、リユースできるものは不用品全体のうちほんの少しだけで、ほとんどがゴミとなってしまいます。
そこで、最近は、遺品整理で出た家財などは、フィリピン、ミャンマー、カンボジアなど東南アジアの国々へ運ばれ、売られるようになってきています。

倉庫のような大きな会場で行われる「ジャパン・オークション」。多くの買い付け業者が集まり、競りをして日本のものを買い付けていきます。
日本製のものはアジアで人気があり、日本では需要の少ないものでもかなり売れるようです。

  • 家具
  • 中古家電
  • ぬいぐるみ
  • キッチン用品
  • 雑貨・衣服
  • その他

家具

日本の家具はとても人気が高いようです。現在の日本では、家具もスリム化の傾向があり、タンスや大きなキャビネット、食器棚などは敬遠されるようになってきています。
しかし、東南アジアではこういった家具が中間層~富裕層の間で大人気で、現地のリサイクルショップでは目玉商品となるそうです。
また、日本ではほとんど売れない商品ですが、中古の金庫もよく売れます。

中古家電

日本では家電の進化が速く、少し経つと型落ちになってしまいますよね。そのため、日本国内では中古家電はなかなか売れず、廃棄処分となるケースがほとんどです。
しかし、東南アジアではこれらの家電の需要が高く、特にテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目は、製造から10年ほど経過しているものでもよく売れるそうです。
また、楽器や、アンプなどの音響機器も、古くても売れる商品です。

ぬいぐるみ

東南アジアでは日本のぬいぐるみや人形が大人気です。

日本国内だったら、たとえばテディ・ベアのブランド品やアンティークものであれば需要がありますが、たとえ遺品でなくても、元の持ち主の魂がこもっていそうな人形やぬいぐるみは敬遠されるものだけに、意外ですね。

キッチン用品

グラスや陶器のお皿などの食器類、鍋や釜、フライパンなどのキッチン用品も、東南アジア諸国で需要が高いものです。
日本では、誰かが使用した中古キッチン用品は敬遠されがち。リサイクルショップでも売れにくいため、買い取りされず廃棄処分となることがほとんどです。
中でも陶器やグラスなどはリサイクルすることができず、重量も重いため、廃棄コストが高いもののひとつです。

雑貨・衣服

雑貨や洋服は、日本ではブランド物以外はほとんど売れません。

しかし、東南アジア諸国では、ノーブランド品であっても品質が高くデザインも良いので、リサイクルショップでよく売れるようです。

その他

上に挙げたもの以外では、自転車、オートバイ、ヘルメット、置物、時計、ゲーム機、釣り具やアウトドア用品、スポーツ用品なども売れ筋です。

これらのものは、日本国内ではほとんどリユースされることもなく、処分されていくものたちです。

今後の遺品整理とリユースは・・・

遺品に対する考え方は、国や地域、宗教によって違うものです。日本の遺品整理は、やはりこれまで日本人が長く培ってきた精神の上に成り立つものなんですね。

しかし、日本でも、フリーマーケットが盛んになってきています。中古品を買うということに抵抗がない人も増えています。
もしかしたら将来は、アメリカのエステートセールのような、新しい形の遺品整理も行われるようになるかもしれません。

不用品となってしまった遺品が、いろいろな形でリユースされることは、遺品の処分を依頼する人のコスト削減につながります。

また、ごみを減らすことで、地球環境にも貢献できるのです。さらには、一部で横行している不法投棄のストップにも役立ちます。

今後の遺品整理においては、依頼主の気持ちに寄り添う仕分け・処分だけではなく、環境問題やコスト削減も視野に入れ、より社会に貢献できる活動をしていくことが大きな柱となっていくことでしょう。

 

 

 

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