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受け継がれていくお墓、自分に子供がいない場合に始めておきたいこと
2020-10-08

お墓は先祖代々、受け継がれていくのが、以前の日本では当たり前でした。
しかし、核家族化が進んで家族の形が大きく変わるとともに、子どものいない夫婦も増えています。
また、子どもがいても遠方に住んでいるなど、お墓を受け継いでいくことは難しくなっています。
生涯未婚率は男女ともに高くなり、お墓をどうするかは、若い世代の悩みとなっているようです。
今回は、お墓を継ぐ人がいない場合、お墓をどうすればいいのか、その準備や方法について見ていきましょう。

 

「お墓を受け継ぐ」とは?

お墓を受け継ぐ人は誰?

 

お墓や仏壇など先祖をお祀りするために必要なものを「祭祀財産」といいます。
これは一般の相続財産とは区別されているもので、共同相続の対象にはあたりません。
祭祀財産を継ぐ人(祭祀承継者)は、特定の1人が受け継ぎます。
祭祀財産を相続人の間で分割すると、祖先の祭祀をするときに不都合が出て来るためです。

誰が祭祀継承者になるかは、基本的に慣習に従いますが、被相続人が生前に指定していた場合は、その人が祭祀継承者になります。
被相続人の指定がない場合、また慣習がはっきりしない場合は、遺族間で合意した特定の誰かがなります。
合意がない場合は、家庭裁判所の調停か審判によって決めることになります。

通常の相続財産と祭祀財産の違いは、税金がかかるかどうかです。
相続財産を受け継ぐときには相続税がかかりますが、祭祀財産を継承する際は相続税などの税金はかかりません。
一般の相続財産について相続放棄をした場合でも、祭祀財産を継承することはできます。

祭祀財産とは?

祭祀承継者が受け継ぐ「祭祀財産」は、民法897条において定められています。

系譜

「系譜」とは、家系図など、先祖から子孫へと続く先祖代々の血縁関係のつながりが書かれた記録文書のことです。

祭具

「祭具」とは、位牌、仏像、仏壇など、祭祀や礼拝に使用する器具や道具のことです。

墳墓の所有権

「墳墓」とは、遺体や遺骨が埋葬してある墓碑(墓石)とお墓の敷地である墓地のことです。
つまり、お墓は祭祀財産であり、特定の1人が受け継いで祭祀(法事など)を行っていくことになります。

後継ぎのいないお墓はどうなるの?

 

お墓まいりに行った時、手入れされずに荒れ果てたお墓があるのを見たことはありませんか?
近年、こういったお墓が増え続けています。
子どもが遠方に住んでいて、なかなかおまいりできない、子どもがいないためにお墓を守る人がいない、などの理由から、やむを得ず放置されているお墓です。
このような、継承者のいないお墓は全国的に増加しています。

跡継ぎのいなくなったお墓は、一体どうなってしまうのでしょうか。
一般的にお墓は、購入する際に寺院や霊園など墓地の管理者に対して永代使用料を支払うことで「永代使用権」を取得し、代々受け継いでいきます。
しかし、継承者がいなくなると永代使用権は取り消され、「無縁墓」となってしまいます。
無縁墓になると、遺骨は墓地の管理者によって合祀され、暮石も全て撤去されます。
つまり、お墓がなくなってしまうのです。
何をもって「無縁墓」と判断するかは、寺院や霊園によっても異なりますが、おおむね「管理費を3年以上滞納している」など、管理費用の滞納年数を基準としているところが多いようです。

管理費用の滞納が一定期間を超えると無縁墓とみなされ、官報や立て札にてお墓の使用者・縁故者に通告されます。
しかし、この通告から1年以上たっても使用者からの申し出がなかった場合、正式に無縁墓と認定され、永代使用権が取り消されることになります。

そして、永代使用権が取り消されると、管理者によってお墓から遺骨を取り出されたのち、墓石や墓碑が撤去されます。

お墓を継ぐ人がいない時、どうすればいい?

 

お墓が無縁墓とみなされ、官報や立て札による公告から撤去までの期間は1年と非常に短いものです。
そのため、数年ぶりにお墓まいりに行ってみたら墓地が更地になっていた、というようなことも起きかねません。
しかも、お墓から取り出された遺骨は、自治体や民間業者の運営する無縁仏合祀墓に合祀され、他人の遺骨と混ざってもう二度と取り戻せなってしまうのです。
大切なお墓を無縁墓にしないためには、どうすればよいのでしょうか。

お墓の管理費をまとめて支払う

繰り返しになりますが、永代使用権は、お墓の管理費(永代使用料)が一定期間支払われなかった場合に取り消されます。
これを逆手にとって、永代使用料を数十年分まとめて前払いすることで、永代使用権の取り消しを防ぐことができます。
ただし、その期間は寺院や墓地によって異なるので注意が必要です。

継承者を指名する

自分のあと、お墓を継承してもらえそうな人は本当にいないでしょうか? よく考えてみましょう。
お墓の継承者になれるのは、配偶者や、子供・親族などの血縁関係のある人だけとは限りません。
お墓の名義人が遺言や口頭などで指定すれば、友人など血縁関係のない人でも継承者になることができます。
ただし、墓地や霊園によっては、継承者が血縁者でなくてはならないと定めていたり、細かな条件が決まっていたりするところもあります。
必ず確認しておきましょう。

墓じまいする

お墓の継承者がいない場合、使用していたお墓を撤去して遺骨を全て取り出し、更地に戻して寺院や墓地に返却する「墓じまい」を行います。
お墓から取り出した遺骨は、そのまま自宅で保管しても問題ありません。
しかし、自分の死後にトラブルになったりしないよう、永代供養墓などへの改葬、散骨などの自然葬にするとよいでしょう。
ただし、墓じまいをしてしまうと、その後のお墓参りができなくなってしまいます。
家族・親族でよく話し合い、慎重に検討することが大切です。

永代供養墓に移す

「永代供養墓」とは、寺院などが継承者に代わって供養をしてくれるお墓のことで、合祀墓、合葬墓、共同墓などとも呼ばれます。
永代供養墓には、合葬式の納骨堂タイプ、地下に合葬式の納骨堂を造り、その上に仏像・仏塔・碑などを立てたタイプ、普通のお墓のような個別タイプなどがあります。
他人の遺骨と一緒に埋葬されてしまうのはデメリットといえますが、墓地の管理や手入れの必要がなく、手間がかかりません。
跡継ぎがいないことを前提としたお墓なので、合同で供養を受けることができます。
もともとの墓地を解体する費用とは別に永代供養費が必要ですが、自分がいなくなったあとも継続して供養してもらえるので安心です。
永代供養墓は、原則的に一定期間を過ぎると遺骨の取り出しができなくなるので、利用する前に改葬の可能性などについて親族間でよく話し合っておきましょう。

期限付きのお墓

あらかじめお墓の使用期限を設定しているお墓です。
跡継ぎがいない人や、子どもにお墓を継承させたくない人、また、お墓を移す可能性がある人にメリットがあります。
使用期限が経過すると、遺骨は自動的に合祀墓へ移され、無縁仏となることはありません。

改葬手続きについて知っておこう

 

改葬とは、納骨、埋葬した遺骨を、他のお墓に移すことです。
墓じまいをはじめ、現在安置されているから遺骨を取り出して別の場所に移す場合、市区町村役場の許可(改葬許可書)が必要となります。
改葬許可書とは墓埋法によって定められている書類で、この書類がなければ改葬を行うことはできません。
では、改葬手続きの手順を見ていきましょう。

新しいお墓を準備する

古いお墓から取り出した遺骨を新たに納める場所を準備しておきます。

必要書類を受け取る

古いお墓の管理者に、改葬する旨を説明し、承諾を得ます。
次に、古い墓地のある市区町村役場で、「改葬許可申請書」「埋葬証明書」など改葬のための必要書類を受け取り、古い墓地の管理者に署名押印してもらいます。

改葬証明書の発行

書類を古い墓地のある市区町村役場に提出し、改葬許可書を発行してもらいます。

遺骨の取り出し・納骨

古いお墓から遺骨を取り出し、古い墓地を撤去します。
新設した墓地管理者に改葬許可書を提出し、新しいお墓に埋葬します。

遺骨の取り出しや新たな納骨の際には、「閉眼供養」や「開眼供養」などの儀式が必要なことがあります。
わからない場合は、霊園や、檀家となっている寺院に確認しましょう。

まとめ

お墓は、故人を偲ぶための大切な場所であり、心のよりどころです。
そこにおまいりするのは自分だけでなく、多くの親族がいることを忘れず、みんなが納得できるような方法を見つけられるといいですね。

 

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